雑誌Pension&Investmentより
EBRI、25周年を迎える
ワシントン − 12月に、小さいが影響力のある研究機関が革新的な研究を公表するとき、この国は、2031年以前に退職する1億2,100万人の退職後の収入の不足に関し、初めての完全な調査を目にすることになるだろう。
企業福祉研究所(EBRI)によって指揮されているその調査は、全国の退職後の収入の妥当性調査のモデルと見なされている。
この研究は、来月で25周年を迎えるその研究機関の目ざとさを示すほんの一例に過ぎない。その研究機関は、不偏不党を誇りとし、退職問題に関する現在の調査と今後の予見に関する深い研究により、評価を得てきた。
その研究機関 ―確定給付型企業年金に関するデータにおける空白を埋めるために、退職者の福祉に関する主要なコンサルティング会社によって設立された− は、401(k)プランの急増後、確定拠出型年金の調査にも進出していった。このようにして、EBRIは、1996年以降、ワシントンに本拠を置く投資信託会社の連合体である投資会社研究所(Investment Company Institute)との協力の下、401(k)プランの加入者に関する最大規模のデータベースを作り上げてきた。このデータベースは、6320億ドル −2001年末現在、全プランが保有する資産の3分の1以上に相当― の規模を持つ4万8786のプランにおける1460万人もの加入者に関する情報を含んでいる。
EBRIの退職後の収入の妥当性調査は2001年9月にオレゴン州で開始され、2002年にマサチューセッツ州とカンザス州の住民にも拡大された。そして、50州すべてにおける1億2100万人の現役労働者と退職者の退職後の収入と支出の間のギャップを突き止めるため、次の5年間において調査を全国規模に拡大することとしている。
刺激された興味
すでに6名以上の議員が、その調査結果と、それがもたらす私的年金、社会保障、メディケア・メディケイド等に対する示唆について興味を持っていることを表明していると、ジャック・バンダレイ氏(調査の責任者であり、フィラデルフィアに本拠を置くテンプル大学経営管理学大学院の助教授)は言う。
「この調査は、確実に国内における脆弱な集団を明らかにし、さらに、この調査でその問題を解決するために今何ができるかを明らかにすることも期待されている。」と彼は言う。その調査結果は、この国の退職年金や退職者のヘルスケアシステムを強化するための制度改正を促すものになるだろう。
究極的には、EBRIによって指揮された研究が、退職保障に関する法律や規制における具体的な変更がもたらす結果を議員、役人等の政策立案者たちが予測できるようにし、彼らがよりよい結果を生み出す法律を作り上げることを可能にすることを、バンダレイ氏は望んでいる。
「「もし制度に次のような変更をした場合、我々は将来の退職者の退職保障のためにこのような効果が期待できます。」と政策立案者たちが言えるようにするために、これをよいモデルに、役立つモデルに、信頼できるモデルに作り上げていくことが、私たちに課せられた義務である。」と彼は言う。
1978年の創業以降EBRIの所長を務めているダラス・ソルズベリ氏の下、EBRIは退職プランの権威となっている。
2001年秋、エンロン社の倒産が退職プランにおける事業主の蓄えに関する関心を惹起させた際、EBRIは退職プランにおける会社の蓄えに関する理解可能なデータと、同様の現象を回避するためにそのとき熟考されていた年金関連法令における様々な改正に関する示唆を、議員たちに提供した最初の研究機関であった。ソルズベリ氏とバンダレイ氏は、エンロン社の倒産が示唆する全国の退職制度への影響に関して、数度にわたり国会の委員会に召致された。
数年にわたりEBRIに対して異議を表明しているシルベスタ・スキーバー氏でさえ、「データを持って待ち構えていたようなものだ…だれも真似できない。」と負けを認めた。スキーバー氏は、ワシントンにあるワトソン・ワイアット社の研究センターの責任者であり、1980年代、EBRIの最初の研究責任者であった。
かけがえのない情報源
退職問題や年金問題の分野における他のほとんどの学者や研究者たちは、その研究成果の利用者と同様、EBRIは議員、マスコミ等、この国の退職制度の内部構造を理解しようと試みている者たちにとって、かけがえのない情報源であることを認めている。
「彼らの使命は事実を探りだすことであり、彼らは極めてうまくやっている。」とウイリアム・ゲイル氏(退職問題に関する広範な調査を行ってきたワシントンの革新系シンクタンクであるブルッキングス研究所(Brookings Institute)の上席特別研究員)は言う。
「EBRIの最大の美徳のひとつは、彼らが数字を公表するとき、それは正しく、役に立つものであることだ。彼らは非常に正直な数字を出すことで評判を得ている。」
ゲイル氏は、自分はEBRIによって出資された調査を指揮してきた115名の特別研究員の一人であるが、EBRIが彼の調査に影響力を行使したことは一度もない、と語る。
ERISA産業委員会(国内の最大級のプランスポンサーの多くを代表している委員会)の会長であるマーク・ウゴレッツ氏は、「彼らは、非常に重要な情報源だ。我々は彼らを信頼している。他の皆がそうしているように。彼らの成果物は、彼らの調査を活用しようとする国会の委員会、裁判所、さらには雇用者の組合等にも信頼されている。」と同調する。
上院の財政委員会における年金に関するアドバイザーであるダイアン・ハウランド女史は、複数の機会にEBRIの調査を利用している。「彼らはとても助けになる。それは彼らが定期的に出している報告によるものだけではない。」と彼女は言う。「彼らは電話でも情報を提供してくれるし、仮の状況を想定したシナリオについて議論してくれる。彼らは地位を求めないが、それは彼らとの関係の美しさである。」と彼女は言う。
批判者の見解
1990年代半ば頃、何人かの退職問題の専門家は、その機関の調査を政府のデータを違う手法で細かく切ったものか、単に表にしただけの、つまらないものと評した。
EBRIの批判者の一人であるスキーバー氏は、その機関の決意された中立性に異議を唱えた:「私は、(その方法では、)政策と絡み合った分野において知識ある専門家になれると思わないし、(彼らが)結論を導いていないとも思わない。実際、彼らは結論を導いている。それは自然な現象だ。」
しかし、ソルズベリ氏は、その機関に出資している実に多様な性質の顧客 −私的・公的年金のスポンサー、保険数理や投資のコンサルタント会社、労働者の組合、産業・商業グループ等からなるー が、EBRIを厳然たる不偏不党主義という立場に立たせていると言う。「非常に多様な財政基礎のために、我々にとって、何かを支持するという役割を担うことを避けることが必要となっている。」と彼は言う。
昔のマーティン・E・シーガル社の前副会長であったロバート・ポール氏(EBRI創設に関する初期の議論をリードしていた人物)は、その機関は当初からの目標を見捨てるべきではない、と言う。
「EBRIは、我々の望む仕事を行っており、完全に客観的で、完全に非政治的であり、人々が結論を導くことができるようなデータを生み出している。私は、それがいかにうまく行われてきたかに驚かされてきた。」と彼は言う。